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【音楽の英語】クラシック音楽(英語 classical music)と「16世紀から20世紀初頭までのクラシック音楽」(英語 Common practice period)」の違い

音楽(Music)

要約は上の結論としてふれました。この英語の意味は、16世紀頃から20世紀初頭までの狭義の「クラシック音楽」の時期をさす米語。というのが筆者がwikipediaの英語版などを検証した結果の解釈です。以下は翻訳ノートになります。

Common practice period 調べ(翻訳ノート)

やや話が細かくなります。記事タイトルで common practice period と書いていますので、もしこの検索ワードでご覧頂いた方向けに、調べの労力を多少は軽減できるよう現時点で筆者が調べたことをメモしておこうと思います。

もう少し詳しく英語版wikipediaの記事とイタリア語版wikipediaの記事から該当部分を引用しながらご説明していきましょう。

Common practice period が使われている例(米)

Common practice period アメリカ英語
“Common practice period” in US english

英語版wikipediaの例

Classical music is art music produced or rooted in the traditions of Western culture, including both liturgical (religious) and secular music. While a more precise term is also used to refer to the period from 1750 to 1820 (the Classical period), this article is about the broad span of time from before the 6th century AD to the present day, which includes the Classical period and various other periods.[1]

https://en.wikipedia.org/wiki/Classical_music

該当の部分は英語版wikipediaの”Classical music”の中にでてきます。

While a more precise term is also used to refer to the period from 1750 to 1820 (the Classical period), this article is about the broad span of time from before the 6th century AD to the present day, which includes the Classical period and various other periods.[1]

https://en.wikipedia.org/wiki/Classical_music

この伝統の中心的な規範は「コモン・プラクティス・ピリオド」として知られる1550年から1900年の間に成文化されました。

The central norms of this tradition became codified between 1550 and 1900, which is known as the common-practice period.

https://en.wikipedia.org/wiki/Classical_music

Common practice period が少し使われている例(伊)

Common practice period イタリア語
“Common practice period” in Itariano

Periodo della pratica comune (Common practice period)
Risultati immagini per Common practice period
DescrizioneSi deve al compositore statunitense Walter Piston, che lo coniò nel 1941, il termine periodo della pratica comune per riferirsi all’epoca del maggiore splendore della musica classica. Esso abbraccia circa 300 anni, approssimativamente dal 1600 al 1900, e comprende il barocco, il classicismo e il romanticismo.

Wikipedia(italiano)

イタリア語版Wikipediaの例
イタリア語版Wikipediaの”Periodo della pratica comune”の項によれば、次のとおり。

Si deve al compositore statunitense Walter Piston (1894-1976)[1], che lo coniò nel 1941, il termine periodo della pratica comune per riferirsi all’epoca del maggiore splendore della musica classica. Esso abbraccia circa 300 anni, approssimativamente dal 1600 al 1900, e comprende il barocco, il classicismo e il romanticismo. Fra i compositori più importanti si annoverano Antonio Vivaldi, Georg Friedrich Händel, Johann Sebastian Bach, Joseph Haydn, Wolfgang Amadeus Mozart, Ludwig van Beethoven, Franz Schubert e molti altri ancora.

https://it.wikipedia.org/wiki/Periodo_della_pratica_comune

(筆者仮訳)それ(”Periodo della pratica comune)はアメリカの作曲家ウォルター・ピストン(1894-1976)[1]によるもので、1941年に作られた。約1600年から1900年までの約300年をカバーし、バロック、古典主義、ロマン主義を含む。最も重要な作曲家には、アントニオ・ヴィヴァルディ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、ヨハン・セバスチャン・バッハ、ジョセフ・ハイドン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、フランツ・シューベルトなどが含まれる。

Common practice period があまり使われていない例(仏・独・日・英など)

ちなみに上記英語版wikipediaの”Common practice period”に関する対訳ページについて確認したところ、フランス語版、ドイツ語版、および日本語の記事およびリンクは存在しなかった(2019年12月14日時点)。

また、英語でも、英国ではあまり使われていないもよう。※イギリスの英語辞書を調べたところ”Common practice period”という用語は登録されていなかった(2019年12月19日時点)。

Common practice period フランス語 ドイツ語

フランス語版やドイツ語版のwikipediaには記載なし
フランス語版Wikipediaやドイツ語版wikipediaでは該当ページが存在しなかたった(2019年12月14日時点)。
Common practice period フランス語

ためしにフランス語版Googleで検索してみた。検索結果は英語版とほぼ同じでとくにフランス語の対訳ページはみつけにくかった。
なお、強いていえば以下の英語版Wikipediaの仏語訳で”la période de pratique courante”という文言がでてくるがこのフランス語で再検索してもそれらを仏語で解説したページはみつけにくかった。

Traduit de l’anglais-Dans l’histoire de la musique d’art européenne, la période de pratique courante est l’ère du système de tons. Wikipédia (anglais)


Common practice period ドイツ語
ためしにドイツ語版Googleで検索してみた。検索結果は英語版とほぼ同じでとくにドイツ語の対訳やそれにふれたページはみつけにくかった。
なお、強いていえば以下の英語版Wikipediaの独語訳で”gemeinsame Praxis”という文言がでてくるがこのドイツ語で再検索してもそれらを独語で解説したページはみつけにくかった。

In der Geschichte der europäischen Kunstmusik ist die gemeinsame Praxis die Ära des Tonsystems. Obwohl es keine genauen Daten gibt, bestanden die meisten Merkmale der Zeit der allgemeinen Praxis von der Mittel- bis Spätbarockzeit über die klassische, romantische und impressionistische Zeit um 1650 bis 1900.

Wikipedia (Englisch)

(該当の英語訳)

In the history of European art music, common practice is the era of the sound system. Although there are no exact dates, most of the characteristics of the time of general practice existed from the Middle to Late Baroque through the classic, romantic and impressionistic period around 1650 to 1900.

Google translate※

※ドイツ語版からGoogle翻訳をかけたもの(英語版Wikipediaの原文とは多少違いがあるかもしれない)

Common practice period 日本語

日本語での Common practice period の検索結果など。

2008年6月8日付OKWaveの質問「”Common Practice Period”って、日本語で何というのでしょうか」や2011年10月19日付はてなブログ仕事の日記さんの「エフゲニー・キーシンと音楽史の「Common Practice Period」などによればいわゆる「クラシック音楽」のこととされている。筆者も英語版Wikipediaの内容的にはそれで相違ないと思ったので上述のとおり「クラシック音楽(Common practice period)」と記載している。

In the history of European art music, the common practice period is the era of the tonal system. Though it has no exact dates, most features of the common-practice period persisted from the mid- to late baroque period, through the Classical, Romantic and Impressionist periods, from around 1650 to 1900.

https://en.wikipedia.org/wiki/Common_practice_period

ネット以外での検索結果(国会図書館等)

ちなみに”common practice period”に該当する音楽用語の訳語は上記の2つの記事以外にはネットで検索してもなかなか日本語で書かれたものは出てこない。念のため、検索用語を替えて論文などをググったりさらに国会図書館HPの検索などでこの用語(英語)を含むクラシック音楽や音楽史その他音楽関係の著書や論文なども検索してみたが2019年12月14日時点ではひとつもヒットしなかった。

Common practice period イギリス英語

“Common practice period” in UK english

「米語」と言い切るのはどうか?一応この用語がイギリス英語や国際的な英語としても定着してるのか。という観点からも英語版Googleや英英辞書などでも調べてみたのですが英国の辞書3例( Oxford, Collins, Macmillan)では検索結果がみあたりませんでした。よって閲覧時点ではほぼ米語と断言できると思った次第です。

Common practice period
UK dictionary check
Collins No results
https://www.collinsdictionary.com/spellcheck/english?q=common+practice+period
Macmillan
https://www.macmillandictionary.com/spellcheck/british/?q=common+practice+period
Oxford
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/spellcheck/english/?q=Common+practice+period

Common practice period
UK dictionary check

Oxford

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/spellcheck/english/?q=Common+practice+period

Collins No results

https://www.collinsdictionary.com/spellcheck/english?q=common+practice+period

Macmillan

https://www.macmillandictionary.com/spellcheck/british/?q=common+practice+period

(備考)

こうした状況をふまえると、個人的には「クラシック音楽」の英語を使う場合、とくに海外でクラシック音楽関連の話題に触れるときには少々注意が必要なのだろうと感じました。

一般的には「クラシック音楽(英語 Classical music)」といえば18世紀頃の古典派を差すことが多いというのはおそらく海外でも日本でもある程度の共通認識でしょう。

たとえばビジネス英語などの日常会話のなかでさらっと触れる程度ならそれでまあまあ。

ただ、音楽関係者との会話ではどうなんでしょう。そもそも英語圏ではもはや伝統音楽や古典音楽という広い意味での「クラシック音楽」ではアフリカの民族音楽やカリブ中南米アラブ・アジアそしてもちろん日本ンの純邦楽など世界の各国の伝統的古典音楽があるというのは大前提。すくなくとも英語版Wikipediaなどではそのプリンシパルはかなり意識されておりClassical musicもわざわざWestern classical musicすなわち「西洋古典音楽」と明記する事例が増えている印象。

これは傾向としては今に始まったことではなく80年代後半からそうした議論がふえ、もはや90年代以降はいわゆる日本の「クラシック(音楽)」は「西洋古典音楽(英語 Western classical music)」という英語表記が主流化していた、というのが筆者の個人的感想。

ただ、日本ではその潮流もややスルー気味で、それ以前にクラシック音楽の英語がClassical musicというその前提の前提の基本的な音楽用語の英語すら意外と知られていなかったりする、かもしれない。これはクラシックに限らず音楽用語というより日本独自の音楽業界用語にかなりの割合で和製英語が定着しているため逆翻訳(和英など)のときにかえって混乱しがちというクラシックだけに限らない音楽英語の翻訳モンダイの注意点でもある。

(さらにいうと音楽業界だけに限らずCMを筆頭に広告業界やさらにはテレビやラジオなどのマスコミさんもふくめいわゆる「ギョーカイ用語」全般の傾向でもあるが、もともとは戦後のジャズマンなどの逆さコトバなどが50年代のジャズからテレビ(クレージーキャッツ、シャボン玉ホリデー)への流れの中で使われそれを子や孫がまねして80年代にとんねるずがシースーなどと拡散して今に至る。てなながれがあるわけだが。要は意外と和製英語とはいえ日本での歴史もこれあり。例えば「CM」を英語風に「Commercial message」と略語を開いてもそれでは英語圏ではテレビCMとは伝わらないので「TV Ads 」などという英語に翻訳しないといけない。この辺は意外と音楽やエンタメ系の日本語を英語に翻訳するときには注意すべき基本事項。)

…とまあ話はそれたが、クラシック音楽だけでも米国英語と英国英語のニュアンスの違いなどまで訳し分けるにはある程度背景を学んでおかないとようわからん。

そもそもこの記事は単に英語版ウィキペディアでクラシック音楽を検索していたらカテゴリーのところにやたら「common practice period」と見慣れない英語があり、しかもそれがかなり頻繁に出てくるので、はじめはスルーしていたが面倒だが無視できなそうな音楽用語のようなので調べてみた、というのがきっかけ。

もちろん仮訳や私案の雑メモブログなので、専門の方々は出典の英語版wikipedia等をよく精査していただきたい。

(備考)筆者落書き(未定稿)

いわば狭義の「クラシック音楽」をさすときの英語訳ともいえるのだろうか? という素朴なギモンもわいてくる。

なお英語版wikipediaによればClassic musicは古典派音楽のことをさすとのこと。筆者もあまりこの辺の用語やジャンル名でこだわりたくはないし、日本語ではみなさん「クラシック音楽」といえば狭義には近世の18世紀~20世紀のクラシックをさすし、広義では6世紀のグレゴリオ聖歌以降の中世西洋音楽からひっくるめて言うコトも実際には多いので、まあどうでもいいのだが(失礼)。というよりまじめに書くと(仮に明治期の誤訳であれ翻訳用語は)日本語として定着したものを尊重する。

もうひとつは仕事の日記さんも指摘しているように”common practice period”というのが英語圏とりわけアメリカの音楽研究によるある種の見方を投影しているものかもしれないということ。

一応、このブログでは英語版wikipediaが比較的出典なども明記された第3次もしくは第4次資料なので主たる参考資料にしている。(それ以上の1次ないし2次資料は絶版だったりでなかなかアクセスできない。ちなみに1次資料はそもそも博物館所蔵の歴史的貴重本だったり外国語版の2次資料も年代は中世から近代というのが英語版Wikipediaでの資料の位置づけ。)

古代の音楽
中世西洋音楽
ルネサンス音楽
バロック音楽
古典派音楽
ロマン派音楽
国民楽派
印象主義音楽
新古典主義音楽
近代音楽
現代音楽

そもそもクラシック音楽という名称は19世紀につくられた用語。

「クラシック音楽(Classical Music)」という用語は早くとも19世紀まで使われていなかった。その頃、ヨハン・セバスチャン・バッハからルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの時代の音楽を復活させる試みがなされたことにより、クラシック音楽が他と区別されるようになった[1]。初めてオックスフォード英語辞典でクラシック音楽に言及されたのは1836年のことである[2]。

余談というより蛇足ぎみだ。いつぞや(たしか10年前頃)「演歌」という言葉も60年代頃に後追いで「創られた」造語だとする音楽史の本があった。構図としてはクラシック音楽も似たような構図なのだろうか。

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