サザンソウルと私
忌野清志郎さんが愛したSTAXなどのサザンソウル。ご存知のように、60年代のロック・ミュージシャンなどもカヴァーをしている。そんな影響もあって、自分も高校時代から愛聴していた。
高校時代には校内放送をジャックし「オーティスに捧ぐ」などとブツブツつぶやきながら”These arms of mine”をゲリラ放送で流したこともある。(もちろんあとで職員室に呼ばれた。)
先達諸兄もおられるのでサザンソウルのコレクターとはおいそれと言い難い。ハテどこまで書けるか不安だ。例えば『STAX Volt complete singles』という9枚組のBOXなどは学生時代から聴き込んだクチ。
STAXではとくに、Booker T & The MG’s に傾倒し、シングルなどは除きアルバムはそろえたと思う。このブログのトップページの写真はもちろん『Green Onion』へのオマージュである(場所はうちの畑だ。笑)。
スウィートソウルミュージックのおすすめ本
『スウィート・ソウル・ミュージック』というピーター・ギュラルニック氏の本もあるのであわせてふれておこうと思う。この方はロバート・ジョンソンの自伝などでも知られるアメリカ音楽史の研究・著述家。この本は昔は原書でしか読めなかったがシンコーミュージックさんで翻訳版がでてとっつきやすくなった。60年代ソウルミュージックがお好きな人や興味のある方にはおすすめ。
スウィート・ソウル・ミュージック―リズム・アンド・ブルースと南部の自由への夢 単行本 – 2005/3/1
ピーター ギュラルニック (著), 新井 崇嗣 (翻訳)
個人的には高校時代に読みたかったなあ。
私がソウルミュージックを知った本?
私の個人的な体験だと高校時代のソウルの教科書はまず桜井ユタカさんのライナーノーツだった。写真はオーティスのベスト盤LPのライナーだがまずはその辺を熟読した。桜井ユタカさんは私らの世代まではソウル名盤のライナーノーツはほとんどこの方だったので個人的にはもう高校の先生とイメージがだぶるぐらい。
(年功序列的には次に中村とうようさんだろうが個人的にソウルにはまった80年代後半あたりではすでに民族音楽の人という印象だった。ただ後述するが70年代半ば頃までの「ニューミュージックマガジン」ではソウル関係の記述も多い。)
次にソウルファンにはおなじみの鈴木啓志(すずきひろし)さんと日暮泰文(ひぐらしやすふみ)さん。
鈴木啓志(すずきひろし)さんは「投げたらあかん」の近鉄バファローズ背番号1番鈴木啓示(すずき けいし)さんとは一字違い。
鈴木啓志さんの詳細なテキストはソウルミュージック関連の知識の泉だった。画像は「USブラックディスクガイド」というディスクガイドだが年代別に整理されてあってソウルファンにはおなじみのテキスト。
個人的には、鈴木さんから60年代ソウルやサザンソウルの王道を教わった。とくにO.V.ライトのボックスを買ったのはこのガイドを熟読したおかげである。『Memphis Unlimited』のカッコよさはソウルファンだけでなく鉄道好きにも痺れるものがあるだろう。
日暮泰文(ひぐらしやすふみ)さんはブラック・ミュージック・リヴュー(Black Music Review:bmr)創刊者やP-Vineレーベル創始者としておなじみ。いわずとしれた日本の黒人音楽界の重鎮。
個人的には、高校時代のイメージでは、日暮さんは50年代までのブルーズ(P-Vine)、80年代HIPHOP(bmr)などの印象が強かった。はじめはなんでラップとかと高校生のくせにオールドファン臭い身構えもした。よくよく記事を読んでいくうちに心酔した。リアルに黒人音楽をみる視点では、私は日暮さんに教わったことが多い。
(ちなみに、1969年当時の「ニューミュージックマガジン」復刻版を拝見するとお二人とも中村とうようさんのニューミュージックマガジン創刊時に名を連ねておられて歴史を感じた。)
スイートソウルミュージックなラジオ
高校時代にソウル系を聞いたラジオでは、山下達郎さんの「サンデーソングブック」やピーターバラカン氏の「ロンドン発ピーターバラカン」などが懐かしい。
もちろんヤマタツさんのサンソンはオールディーズと謳っているのでポップスのイメージもあるだろう。。個人的にはまちがいなくソウルミュージックのラジオ番組の最高峰だと思っている。
バラカンさんは「魂(ソウル)の行方」という本も書かれている。こちらはざっとソウルミュージックの全体像を知るには格好の入門書。
スイートソウルミュージックの参考文献?
他にもソウルでは気鋭の音楽評論家など多士済々。むろんレコード会社やレコード屋さんのライナーはみなさんご閲覧なさるだろうがそれらも良質な参考文献?である。
レコード会社さんのリンクはまた別の機会にたくさん貼らせて頂きたいのでここでは割愛するがとりあえず「P-Vine」だけは外せない。なにせ自分が高校時代に買ったソウル系レコードの大半はこちらのリイシューなのだから。80年代後半のソウル難民にはまさに灯。
さらに、ソウルミュージックやアーティストを深く知りたい場合はレコード・コレクターズ(通称レココレ)やブルース&ソウル・レコーズ(blues & soul records)などの雑誌やシンコーミュージックなどのガイド誌も刊行中である。(リンクは各出版社公式ページ)。
さらにさらに、今や中古レコード屋さんでしかお目にかかれない伝説のソウル雑誌『Soul on』(1972年-2004年)。「ソウル・オン 雑誌」(検索結果にリンク)などでチェック頂きたい。
(2013年に桜井ユタカさんはご逝去。この場を借りしてひとまずご冥福をお祈り申しあげます。)
参考となるブログなどは枚挙にいとまないが長くなるのでまた機会があれば。
(といいつつ『Soul On』ご出身の吉岡正晴さんのブログ「ソウルサーチン」はソウルミュージックファン必見かも。)
ソウルではなくブルーズ本だが三井徹さんの本は米国黒人社会の歴史などにもふれているのでソウルミュージックの背景を知るにはおすすめ。
また、ジャズミュージシャンとの交流が多いが吉田ルイ子さんのルポも62年から71年というソウルミュージック黄金期の記録。個人的にはNYハーレムと南部から中西部シカゴといった地域格差なども想起させてくれる。
最後になってしまったが中村とうようさんの初期本はまだ70年代までは米国黒人音楽にもフォーカスをあてたものがある。これらの入門書でざっと基礎知識を得たうえで読まれるとおもしろいと思う。(とうようさんの本は当時の音楽ファンにはわりと知られていたことを前提に書かれたものが多いので初心者には正直めんくらう部分もあるかもしれない。よって参考書としては大学生から院生レベルなのかもしれない。)
おすすめ本まとめ
以上、個人的に出会った流れで書いてしまった。
以下、読者向けに対象者別におすすめ本をまとめてみたい。
ソウルミュージックを知る本など
初心者向け:
・ピーター・ギュラルニック氏の本『スウィート・ソウル・ミュージック』など。もちろん原書は英語という壁はあるしデータは詳細なのでコアなファンにもすごいと思う本なのだが翻訳が出たので。リアルなソウルミュージックを知るには第三者の解釈より生の声を。そして歴史の流れがわかりやすい構成で読むのが一番かと思い迷ったが初心者向けとした。
・ピーター・バラカン「魂(ソウル)のゆくえ」※60-70年代英国でのソウル熱が匂う好書。
・桜井ユタカさんのライナーノーツ※イチオシだが本でなくてCDライナーノーツなので。
・シンコーミュージック関係の本※中級上級向けの本も多いが語り口が易しめ。
ソウルミュージック入門書。1989年版は廃版でこちらは2008年版。初版になかった90年代ネオソウル部分などが加筆。
中級者向け:
・江守藹(えもり・あい)さん、ニックさん、ドン勝本さん※、ブラザーコーンさんらのソウル・ダンス関連書籍。※ドン勝本さんの本は自分は存じませんが。ドン勝本さんはJBとの交流でも有名な日本のブラックカルチャーのごーっどファーザー。ニック岡本さんは新宿Getなどでご活躍されたソウル・ダンスの英雄。江守藹さんはソウル・ダンスのレジェンドかつイラストや店舗経営でも名をはせた生き字引。ブラザーコーンさんはご存じバブルガム・ブラザーズとして有名ですがニックさん教本などで超渋いフォーコーナーなどソウル・ダンスのリアル伝道者の1人。ダンス本やダンス教本という切り口で探す人が多いかもしれませんが生きたソウル・ミュージックを知るにはこちらもオススメです。
・鈴木啓志さん本※氏の著作でほぼソウルミュージックの全容が明らか。60年代R&Bからソウルミュージックへの流れを知るには必読。
・日暮泰文さん本※つまりbmr関係本。bmr増刊本『U.S.ブラックディスクガイド』は本格的にソウルを聴きたい方には必携。
・三井徹さん本※ブルース入門書だが米国黒人音楽のルーツや背景を知る良書。
・・吉田ルイ子さん本
・雑誌『ブルース&ソウル・レコード』※中級者から超上級者まで日本のブラックミュージックファンの魂の拠り所。最後の砦。
※レコード屋さんは枚挙にいとまがありませんが、ディスクユニオンやタワレコなどのメガストアはもちろん、P-Vineや芽瑠璃堂(めるりどう)Meruri-do、などの老舗レコードショップさんなどでも関連書やブログ、何気にチラシ類なども貴重な情報満載。もちろん地方のレコ屋さんも、福岡のTicroや広島のジズボーイ、大阪のアメ村周辺レコ屋さん、下北店も有名な京都のJET SETなどなどたくさんたくさんあるのでチェックしてみてください。
筆者の方は初版らしく表紙が違うが中身は同じもの。
アメリカ南部を聴く 単行本 – 1998/12/10江守 藹 (著)
江守藹(えもり・あい)さんはいわずとしれた日本のソウル・ダンスのパイオニアのお一人。このサザンソウル
吉田ルイ子さんの本も当時の米国黒人社会のルポとしておすすめ。
1962年から1971年帰国までのリアルなNYハーレムの記録。どちらかというとジャズミュージシャンとの交流が多い。解説では仰々しい形容がされるが私が初心者本としてオススメするのは普通の学生だった彼女が真摯に向き合う姿。そこから生まれるリアル。
上級者向け:
・中村とうよう本※ソウルミュージック関係では70年代半ばまでのミュージックマガジンや80年代までのレココレの特集など。とうようさんの著作は何より事実関係データが貴重。
・ライスレコード(オフィス・サンビーニャ)関連
2011年7月21日。中村とうようさんご逝去。ラテン、ロック、黒人音楽、民族音楽。自分のようにとうようさんの雑誌や著書などで音楽への視野をライフを過ごしてきた人間にとっては軽々にふれがたい思いもあるがこの場をおかりしてひとまずご冥福をお祈り申し上げたい。
いずれにせよソウルミュージックのことはまたふれたいが別の機会にゆずりたい。